ロシアワールドカップ現地観戦記(書籍を一部無料公開)

 私事になりますが、6月にロシアワールドカップを現地観戦しました。日本代表の活躍もあり、盛り上がったと思いますが、現地でも同じ様に盛り上がり、さまざまな感動がありました。

私の日程は以下のとおりです。6/25から1週間の休暇をいただき旅行しました。

6/23(土) 出国(成田〜モスクワ〜エカテリンブルグ)

6/24(日) 日本対セネガル観戦(エカテリンブルグ)

6/25(月) サーカス鑑賞(モスクワ)

6/26(火) フランス対デンマーク観戦(モスクワ)

6/27(水) 移動日(モスクワ〜ヴォルゴグラード)

6/28(木) 日本対ポーランド観戦(ヴォルゴグラード)

6/29(金) 帰国(ヴォルゴグラード〜モスクワ〜成田)

6/30(土) 自宅到着

 

どのスタジアムも臨場感抜群の専用スタジアム(陸上競技場ではない)でした。この距離でワールドカップを観れるというのは、本当に贅沢なことで、これこそが現地観戦の醍醐味だと思います。みなさんも、機会があればぜひ海外まで観戦に出かけてみてください。

 帰国後、日本代表サポーターの村上アシシ氏による呼びかけで、有志による現地観戦記を出版しようということになりました。今回ご縁があって、私も現地観戦記の一部パートを執筆することになりました。(23名の日本代表サポーターによるコラム集)

 今年7月に発売された書籍『ロシアワールドカップ現地観戦記: 日本代表サポーター23人の物語(Kindle版)

 この書籍は、私のようなサラリーマンだけでなく、主婦、大学生など、それぞれの視点で書かれており、めずらしいノンフィクションの読み物になっています。

 私は一人旅でロシアに行くことになったのですが、一緒に旅をしてくれる仲間をSNSで募り、まるでグループ旅行のような旅になりました。そんな思い出を振り返った書籍になります。今回は特別に私のパートを全文無料公開させて頂きます。それでは、お楽しみください。

 

ひとり旅同士がSNSで仲間を見つけてグループで旅する方法

中村大志

 

 私は40歳の会社員です。一度でいいから、日本代表が出場するワールドカップを海外で見たいと思っていました。ワールドカップは、日本中がひとつになれる一大イベント。過去の大会は、テレビ越しにとても盛り上がるのを見ながら、機会を窺っていました。

 今回、ロシア行きが実現したのは、私が勤める会社に5年に1度(25歳、30歳、35歳、40歳…)、5日間の連続休暇を取得できる制度があったからです。ワールドカップは4年ごと、弊社の休暇制度は5年ごと。ということは、4と5の倍数が合う、20年に1度のチャンスでした。今年を逃すと、次は20年後の60歳。今回行かないと、一生後悔する! と一念発起してロシア行きを決めました。

 とはいえ、自分ひとりで行くのは不安です。知り合いに、「ロシアへ一緒に行きませんか?」と声をかけてみましたが、「ロシアは遠いね」、「自分は休みが取れないなあ」とつれない反応ばかりでした。

 ワールドカップに行きたくても、私と同じように「一緒に行ってくれる知り合いがいない」、という悩みを持っている人は多いと思います。しかし、その問題を解決してくれる場所を今回見つけることができました。本書の発案者である、村上アシシさんが主催する、Facebookの「ロシアワールドカップ現地観戦」コミュニティです。

 このコミュニティ内で、私は一緒に旅をする仲間を見つけることができました。今や同じ志を持った人をSNSで簡単に見つけることができます。私がどうやって旅程が一緒になる仲間をコミュニティ内で見つけたのか。その準備から実際の旅まで、簡単にまとめました。4年後のカタールワールドカップにひとりで行ってみようかなと考えている人に、この体験談が参考になれば本望です。

 

W杯だからこそ初対面でも旅仲間になれる

 

 観戦チケットやホテルの手配を進めながら、「ひとり旅だといろいろと大変そうだな…」と悩んでいたところ、今年1月、コミュニティ内に「旅仲間募集」のトピックが開設されました。これは渡りに舟。自分の旅程を書き込んでダメ元で旅仲間を募ってみました。すると、旅の日程もそれなりにかぶっていて、年齢層も近い2人の男性と、コンタクトを取ることができました。

 石川県在住の西出さんは、手配した行きの飛行機が偶然同じ便だったため、成田空港で待ち合わせ、一緒にモスクワへ飛び立つことにしました。ただしモスクワ到着後は、ホテルも国内便も違うので別行動です。ドイツ在住の下野さんとは、モスクワとヴォルゴグラードの滞在日程が重なったので、両都市の観光を一緒にすることにしました。さらに日本対セネガル戦のあと、3人で一緒に夕飯を食べる計画も立てました。スケジュールをすり合わせていく過程でミスが起きないよう、お互いの旅程表をシェアし、Facebookのメッセンジャーで何度も連絡を取り合いました。

 会ったこともない人とSNSのやりとりだけで、一緒に旅をして、トラブルとか起きなかった? と思われるかもしれません。結論から言うと、何ら問題はなかったです。

 当初、私も不安を感じていました。インターネットだけでは相手の人柄などわからないことが多く、もし悪い人だったらどうしよう、と思いました。私の妻も、インターネットで知り合った人と海外旅行に行くことに反対していました。しかし、このコミュニティにはいくつか、安心できるポイントがありました。

 まず参加費が有料のコミュニティという点です。無法地帯のツイッターなどと違い、参加するのにハードルがあることで、怪しい人はほとんどいないだろうと思いました。

 ふたつ目は、SNSの種類がFacebookだったこと。コミュニティに参加している人は実名アカウントが多く、過去の投稿を読めば、ある程度信用できる人かどうかが判断できました。

 さらに、旅の目的がワールドカップだから。お互い「ワールドカップ観戦旅」に出かけるという共通のゴールがあるため、心を開いて情報交換ができました。「念願のワールドカップに行く」という高揚感が人をそうさせるのかもしれません。

 ちなみに下野さんは、ヴォルゴグラードの宿を確保することができず、私が予約したホテルでルームシェアしました。初対面の人と海外で一緒の部屋に泊まるなんてありえない、と思う人もいるでしょう。しかし、何カ月もFacebookでやり取りをしていると、たとえ面識がなくても、旧来の友だちのような感覚になってきて、不思議と信頼関係が生まれてくるものなんです。出発直前には、まるで「運命共同体」と表現できそうな一体感までありました。ワールドカップ、恐るべし。

 

現地でも初対面のロシア人が旅仲間に合流

 

 6月23日、いよいよロシアに出発です。初対面の西出さんと成田空港で待ち合わせ。なんだか、不思議な気分です。航空会社のカウンターでお願いし、隣席にしてもらい、雲の上で10時間、たくさん話をしました。日本代表への熱い思い、今回の旅が実現するまでどれほど苦労したかなど、モスクワまで語り合い、ワールドカップに向け、気持ちが高まりました。

 セネガル戦が行われるエカテリンブルクでは、下野さんとも合流。試合後の食事をどうするか、と考えながらショッピングモールを歩いていると、「何か困っていたら助けますよ!」とロシア人に声をかけられました。日本語を少し話すことができるデニスさん。軽い気持ちで「試合後、地元のレストランに行きたいのですが、お勧めを教えていただけますか?」と聞いたところ、話はとんとん拍子に進み、お勧めのレストランを予約してもらえました。

 彼もセネガル戦を見に行く、というので、試合後に合流して、一緒にレストランに行くことに。デニスさんが日本に留学していた昔話などを聞き、夜遅くまで盛り上がりました。見知らぬ土地で、その日出会った地元の人とお酒を飲む。これぞワールドカップ特有の国際交流だと感じました。デニスさんに「我々3人はロシアに来る前、見知らぬ人同士だったんですよ」と説明しても、にわかには信じてもらえませんでした。それくらい、我々は意気投合していたようです。たった半日でしたが、デニスさんが我々の旅仲間に合流してくれたおかげで、良い思い出ができました(予約をしてくれたお礼の意味も込めて、デニスさんの食事代は日本人全員で出し合いました)。

 

左から2番目が下野さん、3番目が筆者、4番目が西出さん、1番右がロシア人のデニスさん。

 

 ポーランド戦が行われるヴォルゴグラードでは、モスクワからのフライトが別便だった下野さんと空港で合流。ルームシェアする予定のホテルに一緒にタクシーで向かいました。今回の旅で、同じホテルに知り合いが泊まるのは初めてです。宿泊が同じだと、ホテル代を割り勘にできるし、観光やスタジアムに出かける際も、同じタクシーに乗ることができ、料金も折半できます。何よりも一緒に行動してくれる人がいるだけで、とても安心できました。一緒にヴォルガ川周辺を散策したり、ショッピングモールでお土産屋さんを回ったり、完全にふたり旅状態。ロシアにひとりで来たことをすっかり忘れてしまいました。

 観戦チケットの席は違うので、スタジアムに到着後はゲートで一旦別れて、試合後に待ち合わせ。スタジアムでは、隣席に座る日本人のほとんどが、初めて会う方ばかりでしたが、日本語であいさつするだけで意外と仲良くなれます。外国語が苦手な日本人にとって、日本語が通じるだけで安心する面もあるのでしょう。そして何よりも、それぞれが抱えるいろんな事情を乗り越えて、頑張ってロシアまで来た同志なので、自然に連帯感が生まれます。

 試合は負けましたが、日本代表の決勝トーナメント進出決定の瞬間に立ち会うことができました。試合後は市内レストランでサポーター主催の飲み会に参加して、決勝トーナメント進出をお祝いしました。

 今回の旅は、本来ならひとり旅になるところでしたが、コミュニティで知り合った西出さん、下野さんと一緒に行動でき、寂しい思いをすることは一切ありませんでした。サッカーが好きで、日本代表が好きで、同じ価値観を持った仲間との旅は、他にはない感動があり、まさに一生の思い出となりました。

 現地観戦コミュニティがあって、本当に良かったです。ワールドカップに行きたいけど、ひとり旅ではさすがに無理だろう…と思っている人はかなりいたと思います。しかし今の時代、インターネット上の様々なサービスを使わない手はありません。SNS上で同じ境遇の人と仲良くなり、まるで長年の友人と一緒に出かけるような感覚で旅をすることも、可能なんです。

 ワールドカップを通じた素晴らしい出会いが、みなさんにもあることを願っております! 

 

下野さん(左)とサーカス会場の前で記念撮影。筆者右。まるで長年の友人のようです!

 

著者: 中村 大志(なかむら たいし)

 1978年大阪府生まれ、静岡県浜松市在住。地元のジュビロ磐田をゆるく応援。初心者フットサルチーム「WIND RABBITS」を2004年に設立し、10年以上活動中。

 

 こちらの文章が掲載された書籍『ロシアワールドカップ現地観戦記: 日本代表サポーター23人の物語(Kindle版)』では、23人のサッカー日本代表サポーターの、”ロシアワールドカップ現地観戦記”が掲載されております。これを読めば、「次のカタールワールドカップに行ってみようか」という気になるかもしれません。メディアではなかなか報道されない、サポーター達のリアルな現地での記録を、ぜひ書籍でもお楽しみください!現地観戦記チラシ

 

アディショナルタイム

 

 10月になり、ワールドカップのことも思い出になりかけていた頃、Facebookのメッセンジャーにエカテリンブルクでお世話になった、デニスさんから連絡がありました。「おひさしぶりです!みんなさんお元気ですか?私はすぐ日本へ行きます」本当ですか?と聞き直してみると「はい、本当です。明日飛行機できます。」と日本語でのメッセージでした。

 話を聞くと、語学留学のために日本に来たということでした。再会を果たすべく、先日埼玉スタジアムで行われた、ウルグアイ戦を一緒に観戦することになりました。

 

左からデニスさん、筆者、上が西出さん、あのときのメンバーが4ヶ月ぶりに再会です。

 

 デニスさん、ちょっと痩せましたね。(私は少し太りました)アディショナルタイムはまだまだ続くのです、、、


2018-10-20 | Posted in INFONo Comments » 

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